トモーヌのひとりごと

レゴや音楽、政治などを扱う雑記ブログ

労働基準監督署の業務の一部が民間委託になるらしい

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日頃社会ネタやブラック企業ネタを書いている私にとって見逃せないニュースが入ってきました

これはどうなんでしょうね

news.yahoo.co.jp

人員不足の対策だそうで、社会保険労務士・弁護士・労基監督署のOBなどの専門家への委託を想定しているらしい

この問題は単純に「人手増えるからいいじゃん!」ってなる話なのかを考えていきましょう

権限の問題が出てくる

「労基監督署」って名前があるように「署」が付く機関は権限が与えられています

警察のように違法な事業者や関係者に対して出頭や報告を命じることが出来るのでし、臨検・尋問・許可・認定などの権限も与えられています

労基法には監督官の権限について以下のように定めています

図表1 労働基準監督官の権限

101条の1 労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の付属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる

第102条 労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う

第104条の2 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めたときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる

つまり逮捕も出来るって事なのです

違反者が悪質と見なされて必要と判断した場合、逮捕して所轄の警察署に送られるようです

このように労基監督署は警察並みの権限が与えられた行政機関なわけです

 

そんな権限を持つ行政業務を委託する事が可能なのか?

「一部」と書いてあるのでおそらく補助的な業務しか出来ないと予想されます

民間に権限を与えることは考えにくいので結局監督官不足の根本的な解決にならないかと思われます

権限の壁は大きいかなと

委託によって起こるであろう問題

補助的に調査して監督官に報告して臨検に移るという流れになるのでしょうけど、この手順では時間差が生まれてしまうのです

ゴミ関係や上下水道も民間委託にする自治体は多いですが、一つひとつの手続きが民間だけでは権限が無いので行政に承認を取らないといけないわけです

すぐ返事が来る可能性があるとはいえず、備品購入だけで1週間待つパターンもあるわけです

労基監督署の業務の場合、問題がある事業所に民間が行って調査した後、監督官に報告しますが、ガサ入れまで時間がかかるので事業所が証拠隠滅する可能性があるのです

民間が事業所を調査するって事はある程度接触するわけですから、「その内ガサ入れが来るよ」って教えているようなものです

そもそも「民間」という時点で問題ある事業所と繋がりがある可能性が出てきます

社会保険労務士の場合だと、どこかの企業の顧問を務めている事がほとんどなので関連会社が調査の対象になった場合、上手く機能出切るか不安があります

 

民間委託は聞こえの良い言葉なのですが、実際には「時間がかかって効率が悪い」「癒着・情報漏えいの可能性」が懸念されるのです

民間委託は条例違反の可能性あり

実はこの話、単純な問題ではなく国際条約違反の可能性があるのです

ILO条約というのがあって、国際労働基準を定める条約があります

国際労働基準−ILO条約・勧告一覧

条文に以下のように書いてあります

「労働基準法は中央、地方の監督機関を国(厚労大臣)の直轄機関とすることで監督業務の実効性を確保しています」

このように労基監督署は直営でするべきと定められているのです

意見書にもこんな事が

「ILO81号条約(批准)も、監督職員は不当な外部圧力と無関係な公務員でなければならないとし(条約6条)、必要な資格を考慮して採用し、訓練を施すべき(条約7条)と定めています」 

 これを読むと労基監督署の業務を民間委託にするのは条約違反と捉えることが出来ます

そもそも労基監督署の業務は行政がするからこそ程度を保てるわけですから民間委託は問題を増やすだけです

まとめ

一応メリットを考えてみたけど、ちょっと難しいかな

人手増えて業務が効率化したとしても委託業者が正当な仕事をする事は非常に難しい

何故なら非常に高いモラルが必要だからです

民間とはいえ「特定の団体や個人の影響を絶対に受けない」という強い意志が必要なのです

出来ると思いますか?

労基監督署の職員を増やすことが一番の方法と断言します

 

とはいえ国は監督員を増やすことはなく、民間委託を進めるでしょうから我々は今以上に労基法に対して学ぶ必要があるでしょう

皆さんも職場で問題が起きたら証拠を押さえておきましょう