久しぶりにフェイスブックを見ていたら、友人がとある投稿をシェアしていました
概要を言うと、投稿者は動物愛護団体の手伝いをしているそうです
野生の猿に対する柵罠に対する批判ですね
場所は三重県鈴鹿市
罠にかかった猿は猟友会によって処分されます
よくある動物愛護団体の批判ですが、今回はこれを取り上げていきましょう
所詮は感情論、現実が見えていない批判
倫理的には良くないのは理解出来ますが、この投稿者は現実が見えていません
ほとんどが感情論であり、全く問題の解決に至らない意見ばかりです
私は以前、野生動物(有害鳥獣関係)に関する仕事をした事があります
経験を元に「野生動物の現実」を皆さんにお伝えしよう
さっそく動物愛護団体の批判に反論してみよう
反論1「処分せず花火などで追い払いするべき」
一見正論に思えますが重要なポイントを見落としています
それは追い払いのコストです
実際に追い払いをしたことがある人ならば理解出来るでしょうけど、野生動物はアホではありません
花火が「ただの音だけの物」と理解出来るんです
慣れると全く逃げなくなりますし、茂みに隠れて追い払いが終わるとまた出てきます
時間と共に効果が薄れる割に花火代がかかってしまうのです
ちなみに花火の費用はこんな感じです
- ロケット花火は1袋12発入りで200円ほど
- 爆竹は1箱175円ほど
- 追い払い用花火(T3)は1本315円ほど
毎日のように追い払いをすると結構なコストになっちゃうんですよ
しかも効果が無くなっていきますから、金の無駄なんです
反論2「山に食べ物が無いから里に下りてくる」
よくある批判ですが私は間違っていると断言します
皆さんは里に降りてきた動物の繁殖率をご存知ですか?
猿の場合は通常であれば数年に1頭出産する程度ですが、里に降りた猿は毎年生むと言われています
イノシシの場合も同じく年に一度、通常一回に4~5頭生みますが、里に降りたイノシシは一度に生む頭数が増えます(私が見たイノシシは一度に7頭生んでいました)
何故こんなに差があるか分かりますか?
答えは簡単です
里に下りれば栄養が高い餌が豊富だからです
繁殖力には栄養価が関係すると言われており、山にある食べ物より田んぼや畑で育った作物を食べたほうが子孫繁栄に繋がるんです
先ほども言いましたが、野生動物はアホじゃありません
自分の子孫を沢山残せる場所を選びます
だから里に下りた動物は中々山に帰らないんです
確かに人間が開発を進めて山が減っているのは理解できますが、彼らは我々の生活圏に進み繁殖力を高めているんです
反論3「何故動物を処分する必要があるんだ!」
そら誰も好き好んで処分をしませんよ
これには理由があるんです
反論2にも言ったように、野生動物は栄養価が高い場所を選び住み着きます
そして里で生まれた動物は山を知りません
山を全く知らない動物がどんどん繁殖するとどうなるでしょうか?
田畑を荒らされてしまい人も住まなくなってしまい、更に動物が繁殖するでしょう
非常に残念ですが、処分するしか方法はありません
私も昔、里や山を歩いて道無き道を行って動物達の行動範囲と数を調査した事がありますが、その行動範囲の広さと繁殖力に驚愕した記憶があります
「これは普通にやっていたら手に負えない」
これが当時の私の感想でした
ついでにもう一つ付け加えておくと、野生動物の力を感じたら甘い台詞は言えなくなりますよ
私はこの目とこの身で野生動物と接してきました
彼らの力は非常に強く、正攻法ではまず勝てません
そして野生動物は生きるために全力ですからこちらが油断すれば致命傷を受けてしまうのです
野生動物に関する事故を知っていますか?
イノシシに突進されて亡くなった方、オスの鹿に角で腹を割かれた方、猿に噛まれ病気を貰い重傷を負った方、あなたは見たことがありますか?
彼らをナメていませんか?正攻法で勝てる相手じゃないんですよ
そんな力を持った動物が里に下りて栄養をつけて繁殖していくわけです
手に負えなくなれば逃げるしかありませんよ
反論4「電柵を使えばいいだろ」
有害鳥獣対策で使われる手段の1つですが、欠点があります
まずは値段です
安い物で周囲100m程度で2万円後半で、物によってはもっと高いです
当然ですが田んぼ10反以上あればかなりの金額になってしまいます(1反で300坪ほど)
次に効果です
猿の場合、高さが無いとジャンプで進入されてしまいます
鹿の場合、猿と同じでジャンプで進入可能です(鹿のジャンプ力は2m以上)
イノシシの場合、鼻以外に接触しても効果はありません
これで安心出来るでしょうか?結局慣れてしまえば効果は薄れてしまいます
電柵を施した田んぼが荒らされているのを私はこの目で見ました
農家の人の残念な顔を忘れれません
有効かもしれないが安心は出来ないし、コストがかかってしまう
動物が好き勝手すれば農家は逃げるしかない
投稿者の画像から予想した現場周辺をグーグルマップで見てみると田んぼが多く、ゴルフ場もいくつかある土地です
経験上、最悪のパターンです
理由は簡単で猿にとっての逃げ場がゴルフ場になっていると予想されます
追い払いをしたところでゴルフ場に逃げてしまうので山に追い払うのは不可能でしょう
画像の柵罠をの規模から多いと10頭以上捕まえることが出来るでしょうから、群れの規模は100頭以上かと思われます
この群れが毎年数頭ずつ増えていくとすれば、農家にとっては不安でしかありません
せっかく丹精こめて作った作物を荒らされてしまい収入も減ってしまえば、農家としてもモチベーションも無くなり辞めてしまいますよ
ちなみに一度耕作放棄した田んぼを元の状態に戻すことは不可能に近いと言われています
やろうとしても何年もかかるので誰もやりたがらないんです
愛護団体が「農家なんかどうでもいい」って言うならばもう知りませんけどね
まとめ
今回は昔の経験に関連する内容だったので熱が入ってしまいました
動物愛護団体の気持ちは分かりますが、私からしたら「野生動物をナメている」と感じますね
人間とは姿形が違うとはいえ、知能はそれなりにあるんですよ
動物はバカじゃないんで学習もしますし一番良い方法を考えてきます
だから里に下りて栄養の高い餌を食べ、子孫繁栄を促進しているんじゃないですか
彼らの力をその身で体験すれば考えも変わるでしょう
ついでに言うと、動物の処分は県と市町村、そして警察の認可が下りた正当な行為なので妨害をしてはいけませんよ
狩猟に関する資料を見れば分かりますが、結構細かい規制があるんですよ
そら究極的には人間のエゴですけどね
でもこれは人間と動物の縄張り争いなんです
勝ったほうが繁栄するシンプルなルールなのですよ
動物愛護団体に意見するならば、農家の保護について自治体に申出をお願いしたい
農家の保護が充実すれば人間と動物の共存が一歩近づくでしょう
野生動物のコントロールも兼ねるので多額の資金が必要ですから